食べ物の中の水
「みずみずしい」ものほど保存は難しい?
今回はちょっと視点を変えて、食品に含まれる「水」について調べてみました。
食品に含まれる水分量は、食品の腐敗や品質変化に大きく影響します。
ちょっと難しい話になりますが、食品中の水分は、食品成分と水素結合により水和している「結合水」と、結合していない「自由水」に分けられ、微生物に利用されやすい=品質変化に影響しやすいのは「自由水」です。これが多く含まれる食品(生肉、魚介類、果実、野菜など)ほど、保存可能な期間が短くなります。
食品を長期保存するための知恵として生まれた「ジャム」や「佃煮」を化学的に表現すると、「食品に砂糖や塩を加えることで、自由水を結合水にすること」となるそうです。
一瞬で脱水して乾燥させ、お湯で戻す
水は、圧力が低くなると沸点が下がる、という特性を持っています。これを食品の保存に利用したのが「フリーズドライ製法」です。
具体的には、食品をマイナス30〜40度で急速に凍結させ、次に1/1,000気圧以下の真空状態でわずかに加熱します。真空に近い状態では、水の沸点と融点の差はわずか0.01℃なので、氷は瞬間的に気化。つまり、凍った食品の水分は一気に水蒸気となって食品から抜け出し、乾燥してしまうのです。
この方法のメリットは、新鮮な食品のビタミン、ミネラル、色、香りなどを損なわずに保存できること。しかも、食品の中の水分が入っていた空間が収縮せずに確保されるため、お湯を注ぐだけで元のみずみずしい状態に戻すことができます。宇宙飛行士の若田光一さんは、国際宇宙ステーションに滞在する際、フリーズドライの日本食を持参したそうですが、今日では、カレーや鍋料理などを丸ごとフリーズドライにした商品も開発されているそうです。