水の音
水の音は、周囲の環境があってこそ
「水の音」と聞いて、皆さんはどんな音を思い浮かべますか。
川のせせらぎ、滝の音、波が砕ける音、雨音。蛇口から水が流れる音やグラスの中で氷が割れる音、炭酸の泡が弾ける音も「水の音」の一種といえるでしょう。
科学的に考えると、「音」とは、物質が衝突したり接触することによって生じる「空気の振動」です。自然状態において水は周囲の状況に依存するとき、つまりガラスや金属、石や草などに触れたり、高低差のある場所を落下することで「音」を発します。このため、私たちが「水の音」を認識するときは、多くの場合、その水の音が発せられたシーンを思い浮かべているはずです。波やせせらぎの音に「癒し」を感じるのは、海辺や清流の近くに佇んでいる気分になれるから、といえるでしょう。
そのときの心情や生まれ育った文化をうつす「水の音」
水の音は、同じ音でも、聞く人の気分やシーンによって表情が異なる場合があります。
たとえば、水滴が落ちてくる音。爽やかな風の中で聞こえてくれば、湧き水が泉に落ちる瞬間の音、と感じるかもしれません。けれど、真っ暗な中で不安に包まれているときに耳にしたら、ピタピタと水滴が落ちる音が不気味に感じる場合もありそうです。
ふと、歌人の松尾芭蕉が詠んだ俳句を思い出しました。
“古池や 蛙飛びこむ 水の音”
日本に暮らす人の多くは、静寂な世界に響く澄んだ音をイメージすると思います。では、欧米や南半球に暮らす人の心には、どんな音が響くのでしょう。
水は人が生きていくために欠かせないものですから、「水の音」もまた、世界中で響いています。けれどその感じ方は、文化や生活環境によって様々です。たとえば、砂漠に暮らす人々は、芭蕉の句をどう感じるのでしょう。機会があれば、ぜひ聞いてみたいものですね。