水素最前線

水素の歴史から最新の研究や
取り組みを解説

水素は最高の抗酸化物質

生命を維持するためには酸素が不可欠であることは間違いありません。ただし、体内に取り込まれた酸素の1~2%はエネルギーをつくる過程で酸化力が強い「活性酸素」に変わってしまいます。近年の研究から、活性酸素が細胞を傷つけ「酸化」させることが、様々な病気や老化の原因になることが明らかになってきました。酸化は「サビる」とも言われるので、老化とは「体がサビつくこと」に例えられます。近年、ビタミンCやコエンザイムQ10などの「抗酸化成分」が話題になっているのは、体のサビを防いでアンチエイジングに役立てようというものです。
ところで、「酸化」とは物質が酸素と化合すること、または水素や電子を失うこと。「還元」とは酸素の化合物から酸素を奪うこと、またはある物質が水素や電子を与えられることです。つまり水素は最も単純な物質であるゆえに「還元」のためには地球上でもっとも有効な物質といえるでしょう。水素の還元力は程よく弱いので善玉活性酸素と反応しないのです。
従来の抗酸化物質は自分から還元しに向かっていくのに対して、水素は酸化されることで抗酸化という結果になります。
イエスキリストは「欲すれば、まず与えよ」と言いましたが、水素の優しさというのは細胞が酸化される前に、水素が酸化されること、つまり身代わりのように還元という結果を与えてくれます。強いことは弱いこと、弱いからこそ最高というある意味、人間の精神性の理想にもつながる面白い現象です。

医療分野での活用に期待

水素はエネルギー分野で盛んですが医療分野での活用も注目されており、現在、日本国内だけでも40以上の大学・病院・研究機関が水素の研究を進めています。
水素ガスの吸引、水素水の飲用、水素点滴の注射など様々な方法が検討されています。当初、水素には生体内で酸化を抑える効果があると考えられていましたが、それだけに留まらず、抗炎症作用、抗アレルギー作用、エネルギー代謝促進効果などの作用から益々期待が高まっています。
水素がとくに優れているのは、生体の維持に役に立つ必要な活性酸素には作用せず、悪い活性酸素にだけ働きかける、という点です。これまでのところ、水素水はいくら飲んでも副作用がなく、他の薬品や化粧品との併用にも問題がないという点はこれによると考えられます。
一方で、水素が多岐にわたる効果を発揮するメカニズムについても、その解明に向けた研究が進められています。詳細なメカニズムが解明されることで、より安全に水素が活用できるだけでなく、生命活動の不思議についても理解できるようになるかもしれません。

最近の研究発表 心停止後症候群に対して水素ガス吸入が脳障害を改善する効果を発見(慶應義塾大学)>

クリーンエネルギーとしての水素

水素は、ガソリンなどの化石燃料に代わるエネルギー源として注目を集めています。水素が優れているのは、化石燃料と違ってほぼ無尽蔵に利用できる資源であること、そして、エネルギーを取り出す際に二酸化炭素が発生しないクリーンなエネルギーであることです。酸素と反応して電力と熱と水を発生させる際は、エネルギーを生み出す効率が高く、自動車から発電設備まで幅広い分野での活用が期待されています。
現在最も注目されているのは、水素で走る燃料電池自動車の登場です。理科の授業で、水を電気分解して水素と酸素に分ける実験をしたことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。燃料電池は、これと逆の化学反応を利用した装置で、水素と酸素を反応させて電力や熱を発生させるものです。
発電設備としては、家庭用のガス発電設備である「エネファーム」の活用が広がっています。こちらは、都市ガスとして供給されている天然ガスに含まれる水素と空気中の酸素を反応させ、電力と熱を作り出すシステムです。
スマートシティの実現、私たちの健康長寿も水素が鍵を握っています。

<参考>
各自治体で水素エネルギーの活用に対する取り組みがみられますが、東京都では水素エネルギーの普及に向けた戦略の共有及び機運の醸成を図ることを目的として、「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」を設置しています。