日本の名水を訪ねて
「名水」は江戸時代から珍重された?
古くから水資源に恵まれてきた日本には、各地に「名水」と呼ばれ、大切にされてきた水があります。
江戸時代には、遠くより名水を取り寄せ、一杯の茶漬に一両二分(諸説ありますが、現在の貨幣価値で3〜5万円程)という高額な価格をつけた高級料亭もあったとか。ちなみに、この時料亭の主人が取り寄せたのは、玉川上水の取水口の水だったといわれています。
実際のところ、“名水”に明確な基準があるわけではありません。
一般によく耳にするのは、1985年に環境庁(当時)が選定した「名水百選」。これは、国内における優れた水環境を次世代に受け継ぐために、人々の環境保全に対する理解と協力を得るために選定されたものです。
判定条件となったのは、水質・水量・周辺環境が良好であり、地域の人々による保全活動があること。加えて、規模や歴史、希少性・特異性・著名度なども選定基準となったそうです。
新旧合わせて200の名水を有する日本
一方、同じ1985年に厚生省(当時)の肝いりで設置されたのが「おいしい水研究会」。
研究会が示した“おいしい水”の水質要件では、蒸発残留物や硬度、臭気強度、水温などの目安が示されています。大まかにいうと、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを適度に含み、適度な硬度を有していること。そして10〜15度くらい(夏場は20度くらいまで)が「おいしい」と感じるようです。
その後20年以上の歳月が流れ、2008年には「平成の名水百選」が選定されました。昭和の「名水百選」との重複はないため、現在日本には200の「名水」があることになります。
ひとつ注意したいのは、どちらの「名水百選」も、必ずしも飲用に適しているわけではない、ということ。
名水によっては煮沸してからの飲用を推奨しているものもあるので、旅行などで訪れた際は、地元自治体などに確認してください。