「海洋深層水」は天然の機能水?
自然の力で機能を獲得した水
前回触れた「日本機能水学会」によると、機能水とは「人為的な処理によって再現性のある有用な機能を獲得した水溶液の中で、処理と機能に関して科学的根拠が明らかにされたもの」と定義されます。けれど、自然の力で有用な機能を獲得した水もあるのではないでしょうか。
そこで思い出したのが、一時大ブームとなった海洋深層水。
海洋学上は「地球上の2カ所(北大西洋のグリーンランド沖と南極海)で形成される深層水」のことで、熱塩循環によっておよそ2000年かけて世界中の海洋を移動しています。
一方、産業的に利用されている深層水は「深度200メートル以深に分布する海水」のことなので、海水の約95%が海洋深層水となる計算です。
人間の排水で汚染された河川水の影響を受けず、太陽の光が届かないためにプランクトンなども生育しないため、有害な雑菌がごくわずか。水温や含まれる成分が年間を通して一定で、水質が安定しているのが特徴です。また、植物性プランクトンの成長に必要な無機栄養塩類(硝酸塩、リン酸塩など)を豊富に含んでいるので、深層水が表層へ上昇する海域は優れた漁場となります。
科学的なエビデンスの確認が必要かも
ミネラルが豊富で、細菌学的にも科学的にも正常な海洋深層水は、飲料や食品、化粧品などに活用され、商品化されています。残念ながら、登場した当初は海洋深層水が持つ神秘的なイメージが先行し、科学的なエビデンスが得られない商品が乱立する状況もあったようです。
現在、海洋深層水利用として販売されている飲料水などは、海水淡水化プラントによって塩分を取り除いたものです。国内の海洋深層水利用に関する研究で先行する富山県では、海洋深層水のミネラル分を用いて、水関係では初めてとなる特定保健用食品を開発する企業も現れました。ただし、これはオリゴ糖を混ぜた商品なので、海洋深層水そのものの機能とは関係がないようです。
今後、海洋深層水は水産分野や農業分野への活用が期待されています。