私たちの健康に深く関わるといわれる『水素水』。
今や世界中の研究者が水素に注目し、新しい研究成果が次々と報告されています。そこで、水素が持つ働きやさらなる可能性について、水素医学研究の第一人者であり世界的権威の太田成男教授にお話を伺いました。
水素研究スタート3日目の大発見
私が水素に着目したのは、「生命エネルギーの生産工場」とも呼ばれるミトコンドリアの研究過程においてのことです。
ミトコンドリアは、生命にとって必要不可欠なエネルギーを生産する重要な役割を担っていますが、同時に、活性酸素も生み出しています。活性酸素は、細胞を酸化させて傷つけることで、老化や病気の原因となると考えられるため、これを消去する抗酸化物質が注目されたのは、皆さんもご存知のとおりです。
ところが、近年の研究から、活性酸素には「善玉」と「悪玉」の2種類があることがわかってきました。いままで全部の活性酸素が悪いと考えられていたので、区別して消去するということがなかったのですが、体にとって必要な善玉活性酸素には作用せず、悪玉活性酸素だけを選択的に消去する抗酸化物質が重要だということがわかったのです。
そして、私が本格的に水素の研究に着手したのは2005年のことでした。様々な成分を検討するなかで、シンプルに「水素というのも面白そうだ」と考えたからなのですが、これが、衝撃的なほど素晴らしい結果を示したのです。
活性酸素を発生させると、細胞は少し縮んで丸くなり、驚いたような表情を見せる、というのがそれまでの常識でした。ところが、水素を含む培養液のなかでは、細胞は活性酸素に対してニコニコしているではありませんか。長年研究に取り組んできた私たちにとって、細胞がよい反応を示していることはひと目でわかります。水素は細胞傷害性の高い悪玉活性酸素だけを消し、生理学的役割を持つ善玉活性酸素には反応しない、という結果に驚かされたのです。そして、水素の効果を確信したのです。
論文発表と同時に、世界に広がる水素研究
私はこの研究成果をまとめ、2007年、米国医学誌『ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)』に発表しました。スタートからわずか2年というのは異例のスピードではありましたが、それまで何十年もの蓄積があってこその成果です。「老化や病気の悪化に関係する活性酸素が、水素によって消去されることが確認された」というニュースは、発表と同時に、テレビや新聞で大きく報じられました。
あまりに大きな発見だっただけに、活性酸素と水素の研究に対しては懐疑的な意見も少なくありませんでした。けれど、かつて私と一緒に研究に取り組んでいた同僚や後輩たちは、画期的な論文を評価し、共感してくれました。
水素が持つさらなる可能性を明らかにするためには、多角的なアプローチで研究を進めることが有効です。そこで私は、共感してくれた研究者たちに、実験のノウハウなどをすべて公開しました。現在では、様々な専門分野の研究者が彼ら独自のシステムを活用して水素の研究を進めており、世界で400以上の論文が発表されています。
わずか0.1%の悪玉活性酸素だけを狙い撃ち!
水素が優れているのは、抗酸化力が強過ぎない、というところです。体内では1日約60リットルの活性酸素が生まれますが、その中で悪玉活性酸素はわずか0.1%くらいに過ぎません。これまで発見された抗酸化物質は、大部分を占める有用な活性酸素まで、つまり善玉悪玉両方を消去してしまうため、思うような効果が得られなかったのです。水素はおよそ0.1%の悪玉活性酸素だけを狙い撃ちするのです。
水素は悪いところにだけ働きかける性質を持っています。たとえば、高過ぎる数値は下げるよう働きかけますが、平常値以下に下げ過ぎることがないのです。
そして、水素自体は無害な気体なため、副作用がないことも特筆すべきでしょう。過不足なく、都合のいいところに働きかけて効く、これが水素のすごさです。
スポーツの分野では、筋肉疲労の低下に、美容分野では美肌効果にと様々な分野で研究が積み重ねられてきています。また、「二日酔い」で水素水を飲むと回復が早いだけでなく、飲酒の前後でも効果的です。だから、アルコールを飲みすぎてしまうというのが、ある意味、副作用といえるかもしれません。
安全な水素を効率良く摂取するために
2014年11月、FDA(Food and Drug Administration=アメリカ食品医薬品局)で水素の安全性が確認されました。これを機に、世界的に水素の活用が進むことは間違いありません。
ただ私が心配なのは、利用する際の衛生管理です。水素の安全性は確認されていますが、水素水に加工する際に不純物が混入すると、それは害になる可能性があります。たとえば、水素を好むバクテリアがいるため、水素水は普通の水より雑菌が入りやすいのです。水素水は「食品」ですから、食品衛生法の管理下で生産されたモノで、水素の特性をよく考えた構造のアルミパウチ容器入りのモノを選ぶのが安全といえるでしょう。
取材を終えて
太田教授は、研究者として慎重な立場で発言されていますが、水素が持つ可能性の大きさには驚くばかりです。実際、さらに研究が進めば、私たちの健康に対する常識をくつがえすような事実が明らかになるかもしれない、とのこと。これまで「何となく体に良さそう」という漠然としたイメージで水素水を飲んでいましたが、働きが実感できるモノをきちんと選んで、積極的に水素を取り入れたいと思いました。
たいへん有意義なお話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました。